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ホテルのアメニティとプラスチック資源循環法|客室清掃の補充ルール

客室に置く歯ブラシやかみそり、ヘアブラシ、くし、シャワーキャップは、令和4年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(以下、プラスチック資源循環法)とその施行令で、主としてプラスチック製で無償で提供されるものが、使用の合理化に取り組む対象の製品として指定されています。ホテル・旅館が属する宿泊業は、こうした製品を提供する業種として、政令に名前が挙がっている業種のひとつです。

アメニティの出し方を変えると、客室のセットアップ、連泊中の補充、共用部の管理、補充数の記録といった清掃の段取りも一緒に変わります。本記事では、株式会社ライフスタッフが、ホテルの支配人・運営担当者の方に向けて、法律と省令で何が定められているかを条文に沿って整理し、そのうえで客室清掃の補充ルールをどう組み直すかを考えます。

客室アメニティ5品目は「特定プラスチック使用製品」

プラスチック資源循環法第28条第1項は、商品の販売や役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品のうち、政令で定めるものを「特定プラスチック使用製品」とし、これを提供する事業者のうち政令で定める業種に属するものを「特定プラスチック使用製品提供事業者」と定めています。容器包装リサイクル法の容器包装は、ここから除かれています。

具体的な製品と業種は、同法施行令第5条の表に並んでいます。

・フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー及び飲料用ストロー:各種商品小売業、飲食料品小売業(一部を除く)、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業
・ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ及び歯ブラシ:宿泊業
・衣類用ハンガー及び衣類用カバー:各種商品小売業、洗濯業

つまり宿泊業は、客室のアメニティ5品目に加えて、客室や館内で無償で渡すスプーン・マドラー・ストローなども対象になる業種です。全部で12製品のうち、宿泊業に関係するのは10製品にのぼります。

対象になるのは「主としてプラスチック製」のものに限られます(施行令第5条)。環境省のよくあるご質問では、複数の素材でできた製品について、製品全体に占めるプラスチックの割合が重量比で一番大きい場合に「主としてプラスチック製」になると説明しています。また、指定された製品であっても、商品と一体不可分として販売されている場合や、主たる素材がプラスチック製でない製品は対象にならないとしています。

もう一つの条件が「無償で提供される」ことです。売店や自動販売機で販売している歯ブラシは、無償提供ではないため、この制度の想定とは別の扱いになります。客室に置くもの、フロントで手渡すもの、アメニティコーナーで自由に取ってもらうものは、いずれも宿泊に付随して無償で提供しているのであれば対象として考えておくのが自然です。判断に迷う品目があるときは、環境省の普及啓発ページのよくあるご質問や、所管の窓口で確認してください。

省令が求める取組は「目標・合理化・情報提供・体制」

特定プラスチック使用製品提供事業者が取り組むべき内容は、「特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令」(以下、判断基準省令)に定められています。主な条文は次のとおりです。

・第1条(目標の設定):提供する特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する目標を定め、計画的に取り組む
・第2条(使用の合理化):提供方法の工夫や、提供する製品そのものの工夫によって排出を抑制する
・第3条(情報の提供):店頭での掲示、取組内容のインターネット等での公表、製品への表示などで消費者に情報を届ける
・第4条(体制の整備等):取組の責任者の設置などの体制整備と、従業者への研修などを行う
・第5条(安全性等の配慮):合理化を図る際に、安全性、機能性その他の必要な事情に配慮する
・第6条(実施状況等の把握等):提供した量や取組とその効果を把握し、公表するよう努める
・第7条(関係者との連携):国、自治体、消費者、関係団体、関係事業者との連携に配慮し、必要に応じて取引先に協力を求める

第2条が挙げる取組は二つの系統に分かれます。一つは提供方法の工夫で、有償で提供する、使わない人にポイント還元などの景品を出す、使うかどうかを消費者に確認する、繰り返し使うよう促す、といったものです。もう一つは製品の工夫で、薄肉化・軽量化や素材の工夫、適切な寸法の製品、繰り返し使える製品の提供が挙がっています。

環境省の解説ページは、業種や業態の実態に応じて、提供方法や製品の工夫の中から有効な取組を選んで合理化に取り組むよう求めています。有料化はあくまで選択肢のひとつで、どの取組を組み合わせるかは事業者が自ら選ぶ仕組みです。同ページの先行事例には、宿泊施設でアメニティを部屋に置かず、必要な方がフロントに声をかけたり、アメニティコーナーで受け取ったりできるようにする例が紹介されています。

なお、目標の数値は国が一律に決めるものではなく、事業者が自ら設定するとされています(環境省のよくあるご質問)。判断基準省令の別表は、提供量(トン)を売上高や店舗面積など提供量と密接な関係をもつ値で割った「原単位」を使い、基準年度と目標年度の変化率で目標を示す形になっています。ホテルであれば、提供量と関係の深い値として何を使うかを、自社の運営に合わせて決めることになります。

前年度5トン以上は多量提供事業者、取組は全事業者が対象

前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の事業者は、「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」になります(法第30条第1項、施行令第6条)。多量提供事業者の取組が判断の基準に照らして著しく不十分と認められるときは、主務大臣は勧告をすることができ、勧告に従わなかったときはその旨を公表することができます。さらに、公表後も正当な理由なく措置をとらず、排出の抑制を著しく害すると認めるときは、審議会等の意見を聴いたうえで命令することができます(法第30条)。命令に違反した場合は50万円以下の罰金です(法第62条)。また、主務大臣は多量提供事業者に取組の実施状況を報告させたり、立入検査を行ったりすることができ(法第55条第3項、第56条第3項)、報告をしない・虚偽の報告をした場合などは20万円以下の罰金の対象になります(法第65条)。

ここで誤解しやすいのは、5トン未満なら何もしなくてよいわけではない、という点です。環境省のよくあるご質問は、提供量の多寡を問わず、すべての特定プラスチック使用製品提供事業者が制度の対象で、使用の合理化に取り組むことになると説明しています。多量提供事業者かどうかで変わるのは、取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令・罰則の対象になるかどうかです。主務大臣は、すべての特定プラスチック使用製品提供事業者に対して、必要があると認めるときは指導・助言を行うことができます(法第29条)。

提供量の計算は「事業所」単位ではなく「事業者」単位です。環境省のよくあるご質問では、法人格が異なるグループ会社は合算する必要がないとしています。一方、フランチャイズ事業で、約款に特定プラスチック使用製品について本部が加盟者に指導・助言する旨などの定め(判断基準省令第9条の各号)がある場合は、加盟者の提供量も本部事業者の提供量に含めて数えます(法第30条第2項)。また判断基準省令第8条は、本部事業者は加盟者に必要な指導を行うよう努め、加盟者は本部の措置に協力するよう努めるものとしています。フランチャイズ加盟のホテルでは、本部の方針を確かめたうえで客室の運用を組み立てるとよいでしょう。

提供方法を変えると客室清掃の段取りが変わる

アメニティの出し方を見直すとき、見落とされやすいのが清掃の段取りへの影響です。法律が求めているのは提供する事業者の取組ですが、実際に客室へアメニティを並べ、補充し、片付けているのは清掃の現場です。提供方法を変える前に、次の点を清掃側と決めておくと、切り替え後の混乱を抑えられます。

客室のセットアップ基準を書き換える
アメニティを部屋に置かずにフロントやアメニティコーナーでの提供に切り替える場合、客室のセットアップ表から外す品目と、引き続き置く品目を明確にします。フロアや客室タイプによって扱いを分けるなら、その区分も表に入れます。基準が曖昧なまま切り替えると、以前の習慣で置いてしまう客室と置かない客室が混ざり、宿泊者から見れば「部屋によって違う」状態になります。

アメニティコーナーを共用部の清掃・補充の対象に入れる
アメニティコーナーを設けると、ロビーやエレベーターホールなどに新しい補充・清掃ポイントが生まれます。補充の時間帯と担当、欠品時の連絡先、周辺の拭き上げを、共用部の清掃計画に組み込みます。厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」は、洗面所の管理の項で、くしやヘアブラシを備える場合は客1人ごとに消毒するなど衛生的なものを置き、消毒済みのものと使用後のものの置き場所を区分して表示することが望ましいとし、カミソリを備える場合は新しいものとすることとしています。提供場所を変えても、こうした衛生面の考え方は変わりません。

「不要」の意思を清掃側に伝える
使うかどうかを宿泊者に確認する方式(判断基準省令第2条第1号の「意思を確認すること」)を取り入れた場合、確認するのはフロントや予約の段階でも、その結果を客室に反映するのは清掃です。連泊中に「アメニティは不要」と答えた客室へ毎日補充してしまっては、確認した意味がなくなります。客室ごとの意思をどの帳票やシステムで清掃側に伝えるか、清掃の指示書のどこに表示するかを決めておきます。連泊中の「清掃不要」の伝え方や札の扱いは「ホテル連泊中の客室清掃ルール」でも整理しています。

未使用で残ったアメニティの扱いを決めておく
チェックアウト後の客室には、未開封のまま残ったアメニティもあれば、開封済みのものもあります。これを回収して次の客室に回すのか、廃棄するのかは、衛生面と宿泊者の受け止め方の両方に関わるため、清掃スタッフがその場で判断するのではなく、施設の方針として先に決めておくべき事項です。とくにカミソリは、衛生等管理要領が新しいものとすることとしている品目です。

補充数の記録を提供量の把握に生かす
判断基準省令第6条は、提供した量や取組とその効果を把握し、公表するよう努めるものとしています。客室やアメニティコーナーへの補充数は、清掃の現場で把握できる数字です。仕入れや在庫の数量とあわせて見ると、実際にどれだけ提供したかをつかみやすくなります。品目ごとの補充数を日報や在庫表に残しておけば、提供量の把握や、切り替えの前後で量がどう変わったかの確認に使えます。どの品目を何単位で数えるか、誰が集計するかは、施設側の担当者と清掃側の責任者で取り決めます。補充のルールや棚卸しの仕組みは「客室アメニティの在庫管理」で詳しく紹介しています。

素材の切り替えは安全性・機能性と清掃の目線で確かめる

判断基準省令第2条第2号は、薄肉化・軽量化や素材の工夫、繰り返し使える製品の提供などを、製品側の工夫として挙げています。木や竹、紙などを使ったアメニティに切り替える施設もありますが、同時に第5条は、合理化を図る際には、提供する製品の安全性、機能性その他の必要な事情に配慮するよう求めています。かみそりや歯ブラシのように肌や口に触れる品目では、使い心地や安全性に関する宿泊者の声に注意を払う必要があります。

清掃の目線で見ると、素材が変われば保管の仕方や見た目の変化にも気を配る必要が出てきます。湿気の多いバスルームに置きっぱなしにする品目、ストックの保管場所、外装の破れや汚れの見分け方など、セットアップ時の検品基準も新しい製品に合わせて見直します。切り替えの直後は、客室で気付いたこと(破損、汚れ、宿泊者が使わずに残しがちな品目など)を清掃スタッフから報告してもらう期間を設けると、施設側の判断材料になります。

また、環境省のよくあるご質問では、代替素材の製品に切り替える計画がある場合でも、手元の在庫を廃棄する必要はないとしています。在庫を使い切りながら順次切り替える場合は、客室によって新旧の製品が混在する期間が生じます。清掃スタッフが迷わないよう、どの品目をいつから切り替えるかを、指示書で分かる形にしておきます。

清掃を委託している場合の役割分担

特定プラスチック使用製品提供事業者として目標を立て、提供方法を選び、責任者を置き、従業者に研修を行うのは、アメニティを提供しているホテル・旅館の側です(判断基準省令第1条〜第4条)。清掃を外部に委託していても、この立場は変わりません。そのうえで第7条は、取組を効果的に進めるため、必要に応じて取引先に協力を求めるとしています。清掃を外部に委託している場合は、その委託先も、協力を求める取引先のひとつになりえます。

委託している場合は、アメニティの扱いを変えるときに、次のような事項を委託先の責任者とすり合わせておきます。

・客室・アメニティコーナーのセットアップ基準と、切り替えの開始日
・「不要」と答えた客室の伝え方と、清掃の指示書での表示方法
・未使用・開封済みのアメニティを回収したときの扱い
・補充数の記録方法と、施設への報告の頻度・形式
・新しい製品の検品基準と、気付いた点の報告ルート

変更は、委託先の清掃スタッフに直接指示するのではなく、委託先の責任者と取り決めた手順を改める形で反映するのが基本です。請負で清掃を任せている場合、作業の指示・管理は受託した会社が行うものだからです。

回収したプラスチックごみの出し方も、あわせて確認しておきたい点です。プラスチック資源循環法第4条第1項は、事業者はプラスチック使用製品廃棄物を分別して排出するとともに、その再資源化等を行うよう努めなければならないとしています。また、事業活動に伴って生じた廃プラスチック類は、廃棄物処理法で産業廃棄物とされています(第2条第4項第1号)。客室で回収したごみの分け方と出し方は、施設が契約している処理業者との取り決めや自治体の案内を確認し、施設側で決めた分け方を清掃の手順に落とし込みます。

アメニティの出し方を変えるときの客室清掃のご相談はライフスタッフへ

アメニティのプラスチック削減は、提供量の多寡を問わず、提供する施設が自ら目標と取組を選んで進める制度です。どの方法を選ぶ場合も、客室のセットアップや補充の手順をあわせて見直しておくと、切り替えが現場に定着しやすくなります。株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃と共用部・館内清掃を請負としてお引き受けしており、客室のアメニティ・備品の補充とセットアップも作業範囲に含まれます。具体的な対応範囲は、施設の状況やご希望をふまえて、ご契約前にすり合わせます。稼働前に清掃基準・手順・備品の位置・報告方法をすり合わせ、スタッフに施設ごとのルールを教育したうえで配置し、ご要望は当社の責任者を通じて現場に反映します。アメニティの出し方を変えるのに合わせて客室清掃の手順を見直したいときは、お気軽にご相談ください。

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