ホテルの使用済みリネンの扱い|回収・分別とリネン業者への引き渡し
客室清掃で毎日いちばん多く手に触れるもののひとつが、使用済みのシーツやタオルです。外したリネンを袋に詰めてリネン庫へ運び、リネン業者に引き渡す。この流れは当たり前すぎて、手順として書き出されていないことが少なくありません。けれども、汚れのひどいリネンが他のリネンと混ざったり、未使用のリネンと使用済みのリネンが同じ棚に並んだり、回収袋の中に宿泊者の持ち物が紛れ込んだりといったことは、この「当たり前」の流れの中で起こります。
本記事では、株式会社ライフスタッフが、ホテルの支配人・運営担当者の方に向けて、使用済みリネンの回収から分別、保管、リネン業者への引き渡しまでを、厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」や、リネン業者の側に適用されるクリーニング業法の決まりとあわせて整理します。
旅館業の衛生等管理要領が寝具について定めていること
まず、ホテル側の基準を確認しておきます。厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」は、「寝具」を、寝台、敷布団、掛け布団、毛布、敷布又はシーツ、枕、カバー(包布等)、寝衣(浴衣を含む。)など、睡眠などに使用されるものと定義しています。
そのうえで、寝具の管理の項では、布団、枕、毛布は原則として敷布又はシーツ、カバーで適切に覆うこと、寝衣、敷布又はシーツ、布団カバー、枕カバー、包布など直接人に接触するものは宿泊者1人ごとに洗濯したものと取り替えることを求めています。同じ宿泊者については、寝衣は毎日、その他のものは3日に1回は少なくとも取り替えることとされています。あわせて、寝具は適切に洗濯・管理等を行うこと、とも書かれています。
リネンの保管場所についても記載があります。寝具を収納する押し入れその他の保管室は、適切に清掃し、常に清潔に保つこととされています。洗面室や便所などに備え付ける手ぬぐい、タオルなどについては、清潔で衛生的に取り扱い、使用に支障が生じないよう適切な数を常に供給すること、とされています。
要領に書かれているのは「洗濯したものと取り替える」「清潔に保つ」といった到達点です。使用済みのリネンを客室からどう運び出し、どこに置き、どう引き渡すかという途中の工程は、施設ごとに決めていく部分になります。なお、この要領は国から自治体への技術的な助言という位置づけで、施設が講じる衛生措置の具体的な基準は、旅館業法第4条第2項にもとづき、都道府県(保健所を設置する市・特別区を含む)が条例で定めています。連泊中のリネンの交換頻度なども、自治体によって定め方が異なることがあります。自館の所在地の条例や保健所の案内もあわせて確認してください。
リネン業者にはクリーニング業法の決まりがある
リネンの洗濯を外部のリネン業者に任せているホテルもあります。この業者の側には、クリーニング業法の決まりがあります。クリーニング業法第2条は、クリーニング業を、溶剤又は洗剤を使用して衣類その他の繊維製品などを原型のまま洗たくすることを営業とすることと定め、その中に「繊維製品を使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収して洗たくし、さらにこれを貸与することを繰り返して行なうこと」を含めています。リネンを貸し出し、回収して洗い、また貸し出すリネンサプライも、この法律の対象です。
同法第3条第3項は、営業者が講じなければならない措置として、洗濯物を洗濯又は仕上げを終わったものと終わらないものに区分しておくこと、洗濯物をその用途に応じ区分して処理することなどを挙げています。さらに第5号で、伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるものとして厚生労働省令で指定する洗濯物については、他の洗濯物と区分しておき、洗濯の前に消毒すること(洗濯が消毒の効果を有する方法でなされる場合は不要)を求めています。
この「指定する洗濯物」は、クリーニング業法施行規則第1条に並んでいます。営業者に引き渡される前に消毒されていないもののうち、伝染性の疾病にかかっている者が使用した物として引き渡されたもの、伝染性の疾病にかかっている者に接した者が使用した物で病原体による汚染のおそれのあるものとして引き渡されたもの、手ぬぐい、タオルその他これらに類するもの、などです。
厚生労働省の「クリーニング所における衛生管理要領」(令和7年3月26日の一部改正までを反映した版)も、リネンサプライ等のクリーニング所には、回収した洗濯物の選別及び前処理を行う場所又は設備を設け、洗濯物の種類及び汚れの程度に応じて区分して入れる容器等を備えることとしています。洗濯物の管理の項でも、回収した洗濯物の種類及び汚れの程度に応じた選別を行い、別々に区分して処理することが求められています。
これらはリネン業者の側の決まりで、ホテルに表示などを義務づけるものではありません。そのうえで、運用を考えるときの手がかりがあります。規則第1条の第1号と第2号は、いずれも「〜として引き渡されたもの」という書き方をしています。業者は回収したリネンを種類や汚れの程度で選別しますが、どの客室から出たどんな状態のリネンなのかを、袋の外から見分けるのは簡単ではありません。別に扱うべきリネンがあるときは、それが分かる形で引き渡すことが、業者側の区分を確実にする手がかりになります。
客室でリネンを外すときに決めておきたいこと
使用済みリネンの扱いは、客室でシーツを外す瞬間から始まります。ここでの手順を決めておくと、後の工程がずっと楽になります。
一つ目は、中身の確認です。シーツや枕カバー、布団カバーを外すときに、中に宿泊者の持ち物が残っていないかを確かめます。スマートフォンやアクセサリー、眼鏡などがリネンに包まれたまま回収され、リネン業者のもとで見つかるということは起こりえます。外したリネンは広げたまま目で確かめ、枕カバーの中には手を入れて確かめるといった動作を、手順の中に入れておきます。嘔吐物や血液などで汚れたリネンや、トコジラミなど害虫の痕跡があるリネンは、振ったり広げ直したりせず、後で触れる「汚れのひどいリネン」の手順に切り替えます。
二つ目は、外し方です。外したリネンを床に直接置かない、大きくはたいてほこりを舞い上げない、未使用のリネンを積んだカートの上に使用済みのものを載せない、といった基本を決めておきます。使用済みのリネンは回収袋かカートの使用済み側に入れ、未使用のリネンと触れないようにします。
三つ目は、汚れのひどいリネンの見分け方です。血液や嘔吐物、排せつ物などで汚れたもの、飲み物やメイク用品で大きく汚れたもの、破れや焦げがあるものなど、通常の回収袋に入れてよいかどうかを現場で迷いそうなものを、あらかじめ挙げておきます。そのうえで、それぞれをどの袋に入れ、誰に報告するのかを決めておけば、スタッフが一人で判断を抱え込まずにすみます。嘔吐物で汚れたリネンのように感染症のおそれがあるものは、通常の回収とは分けた手順で扱います。具体的な処理の手順は、施設の感染症対策のマニュアルや保健所の案内に沿って決めておきます。処理の際の防護について、厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&A」は、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用したうえで汚物を処理するとしています。また要領は、特定感染症(感染症法の一類・二類感染症など)にかかっている、又はその疑いのある宿泊者がいるときは、保健所等の指示を受け、その使用した客室、寝具及び器具類を消毒、廃棄等必要な措置を行うこととしています。この場合のリネンは、通常の回収に回さず、保健所等の指示に従って扱います。
分別と回収袋の分け方
客室から出たリネンは、少なくとも「通常の使用済みリネン」と「別に扱うリネン」に分けて回収します。別に扱うリネンは、さらに汚れのひどいもの、感染症のおそれがあるもの、トコジラミなど害虫の痕跡があるもの、破れなどで使えなくなったものに分けておくと、その後の判断が早くなります。
分け方は、袋の色を変える、袋に印を付ける、伝票やタグに書き添えるなど、リネン業者との取り決めによってさまざまです。大切なのは、現場のスタッフが迷わず同じ分け方をできることと、業者の側でその区分がそのまま伝わることです。現場で独自に工夫した印が業者に伝わっていなければ、分けた意味が薄れてしまいます。分け方を決めたら、写真付きの一覧にしてリネン庫や清掃カートの近くに掲示しておくと、応援のスタッフや新しく入ったスタッフにも伝わりやすくなります。
種類ごとの分け方も、業者との取り決めに合わせます。シーツ、枕カバー、デュベカバー、バスタオル、フェイスタオル、バスマット、浴衣など、業者が種類ごとに数えたり洗い分けたりしている場合は、ホテル側で種類別に袋を分けておくことで、回収時の確認が早くなることがあります。どこまで分けるかは、業者の選別の方法と、現場の手間とのバランスで決めます。
リネン庫での保管と未使用リネンとの区分
回収した使用済みリネンは、業者の回収まで館内のどこかで保管することになります。ここで気をつけたいのは、未使用のリネンとの区分です。使用済みのリネンを置く場所と、未使用のリネンを置く棚をはっきり分け、使用済みの袋を未使用の棚の前に積み上げないようにします。スペースが限られたリネン庫では、床に区画線を引いたり、表示を付けたりして、置き場所を固定しておくと崩れにくくなります。
リネン庫そのものの清掃も、手順に入れておきます。先に触れたとおり、要領は寝具の保管室を適切に清掃し、常に清潔に保つこととしています。使用済みのリネンを出し入れする場所は、ほこりや繊維くずがたまりやすい場所です。リネン庫の床や棚を清掃する頻度と担当を決めておきます。
自館に洗濯室を設けてタオルなどを洗っている施設もあります。要領は、洗濯室を設ける場合の構造設備や、洗濯室の管理について、「クリーニング所における衛生管理要領について」に準ずる、又は準じて適切に措置することとしています。外部の業者に出しているリネンと自館で洗っているリネンが混在する施設では、どれをどこで洗うのかを品目ごとに整理しておくと、取り違えが起きにくくなります。
リネン業者と取り決めておきたい項目
リネンの扱いを現場のルールとして定着させるには、リネン業者との取り決めが欠かせません。次のような項目を、契約や運用のすり合わせの中で確認しておくとよいでしょう。
回収と納品の時間帯と場所。業者が回収に来る時間と、ホテル側の清掃が終わる時間がずれていると、使用済みリネンが長くリネン庫にとどまります。客室の稼働や清掃の時間帯に合わせて、回収の時間を決めます。
別に扱うリネンの引き渡し方。汚れのひどいもの、感染症のおそれがあるもの、トコジラミなど害虫の痕跡があるもの、破れなどがあるものを、どの袋に入れ、どう表示し、伝票にどう書くのか。業者の側で区分して処理できる形を、業者と一緒に決めておきます。
数量の確認方法。引き渡したリネンの枚数と、納品されたリネンの枚数をどこで確認するのか。リネンが貸与品である場合、数が合わないことは費用にも関わります。どちらの側で数え、差異が出たときに誰に連絡するのかを決めておきます。
シミが落ちないもの、破れたものの扱い。業者の洗濯で汚れが落ちなかったリネンや、破れのあるリネンが納品に混ざっていた場合に、ホテル側でどう扱うのか。客室に出す前の検品で見つけたものを、どう業者に戻すのかも決めておきます。
回収されたリネンから見つかった物の連絡。宿泊者の持ち物がリネンに紛れて業者のもとで見つかった場合の連絡先と、ホテルへ戻してもらう方法を確認しておきます。戻ってきた物は、客室で見つかった忘れ物と同じ記録・保管の流れに乗せます。
清掃を委託している場合の役割分担
客室清掃を外部に委託している施設では、ホテル、清掃の委託先、リネン業者の三者がリネンに関わることになります。客室でリネンを外して回収し、新しいリネンでベッドメイクをするのは清掃の委託先、リネンの洗濯と納品はリネン業者、リネン業者との契約や取り決めはホテル、という分担がその一例です。
ここで抜けやすいのが、三者のあいだの情報の流れです。汚れのひどいリネンを見つけたときに清掃スタッフが誰へ報告するのか、業者から「この客室のリネンに異常があった」と連絡が来たときにホテルがどう清掃側に伝えるのか。清掃を委託している場合、清掃スタッフへの指示や報告の受け取りは、委託先の責任者を通す形にします。業務委託(請負)では作業の指示・管理は受託した会社が行うもので、ホテルから委託先のスタッフへ直接細かく指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。分け方の変更や業者との取り決めの変更があったときも、委託先の責任者を通じて現場に反映する流れにしておきます。
リネンの分け方や扱いを、清掃の委託契約の作業範囲や手順書にどこまで書き込むかも、あらかじめ整理しておきたいところです。業務の範囲が曖昧なままだと、汚れのひどいリネンの扱いのような判断に迷う場面で、誰の仕事なのかが決まりません。
出典:旅館業法・クリーニング業法・クリーニング業法施行規則(e-Gov法令検索)、「旅館業における衛生等管理要領」(厚生労働省・令和8年1月20日の改正までを反映した版)、「クリーニング所における衛生管理要領」(厚生労働省・令和7年3月26日の一部改正までを反映した版)。本記事は、これらをもとに株式会社ライフスタッフが要約・編集して作成したものです。
使用済みリネンの回収と客室清掃のご相談はライフスタッフへ
使用済みリネンの扱いは、客室でリネンを外すときの確認、汚れの程度による分別、リネン庫での未使用リネンとの区分、そしてリネン業者への引き渡し方までがつながって、はじめて現場に定着します。リネン業者との契約や取り決めは施設が担い、客室の清掃はその取り決めに沿って動く、という役割分担をはっきりさせておくことが土台になります。株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃・ベッドメイク・リネン類の回収・交換・補充を、請負としてお引き受けしています。清掃基準・作業範囲・報告方法はご契約前にすり合わせ、当社の責任者を通じてスタッフへの指示・管理を行います。客室でのリネンの回収や分別の手順も含めて、施設に合った客室清掃の進め方を整えたいときは、お気軽にご相談ください。