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ホテル清掃の洗剤と化学物質管理|SDS・小分け容器・保護具の基本

ホテル清掃の洗剤と化学物質管理|株式会社ライフスタッフ

客室のバスルームやトイレの清掃では、酸性・アルカリ性・塩素系など性質の違う洗剤を毎日使います。こうした業務用の洗剤は、労働安全衛生法の「化学物質管理」の対象になることがあります。令和6年4月に新しい化学物質規制が全面施行されてからは、これまで化学物質と縁が薄いと思われていた清掃の現場でも、使う洗剤によっては、ラベルやSDS(安全データシート)を確かめ、リスクを見積もって対策を取ることが求められるようになりました。

本記事では、株式会社ライフスタッフが、ホテルの支配人・運営担当者の方に向けて、客室清掃で使う洗剤の化学物質管理の基本を整理します。ラベルとSDSの確かめ方、混ざる事故の防ぎ方、小分け容器の表示、保護具と教育、そして清掃を委託している場合の役割分担までを順に見ていきます。

客室清掃の洗剤も化学物質管理の対象になりうる

奈良労働局は、新しい化学物質規制の説明の中で、業務上日常的に使われる洗浄剤や漂白剤・かび取り剤などにも規制対象物が含まれているものがあり、これまで化学物質管理になじみのなかった事業者も対象になっている、と注意を呼びかけています。

対象の範囲は広がり続けています。厚生労働省の資料(令和7年9月の安全衛生分科会資料)によると、国のGHS分類で危険性・有害性があるとされた物質が「リスクアセスメント対象物」として順次追加され、令和6年4月時点の約1,100物質に、令和7年4月に約700物質、令和8年4月に約800物質が追加されました。同資料の図では、特別規則の対象物質(約300物質)を含めた範囲として、令和8年4月1日以降を約2,900物質と示しています。以前は対象外だった成分を含む洗剤が、いまは対象になっていることもありえます。

事故の数も軽くはありません。岡山労働局のリーフレットによると、化学物質を含む「危険物、有害物等」との接触による災害で、令和6年は全国で470人が休業見込み4日以上となり、うち9人が亡くなっています。厚生労働省の「ビルメンテナンス業での洗浄作業」化学物質管理マニュアル解説テキスト(2025年3月)は、令和元年から3年の「有害物等との接触」による労働災害のうち清掃・と畜業が97件で、そのうち洗剤・洗浄剤や消毒・除菌・殺菌・漂白、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、剥離剤による事例が計52件を占めると分析しています。

一方で、すべての洗剤が同じ扱いになるわけではありません。労働安全衛生法第57条(ラベル表示)と第57条の2(SDSの通知)には、主として一般消費者の生活の用に供するための製品を除くただし書きがあります。労働安全衛生規則第12条の5でも、事業者が行うリスクアセスメントから「主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るもの」が除かれています。つまり、家庭用として売られている製品か、業務用として流通している製品かで扱いが分かれます。業務用の大容量品や、清掃会社向けに販売されている洗剤を使っているなら、まずラベルとSDSで中身を確かめるところから始めます。業務用であっても、成分の含有量が一定未満で対象にならない製品もあるため、「業務用の洗剤を使っている=必ず対象」とは限りません。判断に迷うときは、SDSの記載を販売元に確認したり、所轄の労働基準監督署に相談したりするのが確実です。ただし、法令上の対象かどうかと、現場の危険は別の話です。家庭用の塩素系漂白剤やかび取り剤でも、酸性の洗剤と混ざれば塩素ガスが発生します。この後で紹介する混ざる事故の防ぎ方や保護具の考え方は、家庭用の製品を使っている現場でも役に立ちます。

まずラベルとSDSで対象かどうかを確かめる

労働安全衛生法第57条は、対象となる物を容器に入れて譲渡・提供する者に、名称、人体に及ぼす作用、貯蔵または取扱い上の注意などと、注意を喚起する標章(絵表示)を容器に表示するよう求めています。第57条の2は、対象物を譲渡・提供する者に、名称、成分及びその含有量、物理的及び化学的性質、人体に及ぼす作用、貯蔵又は取扱い上の注意、事故時の応急の措置などを相手方へ通知するよう求めています。これがSDSです。通知の方法は紙に限らず、電子メールや、記載されたホームページのアドレス(二次元コードを含む)を伝える方法も認められています(労働安全衛生規則第34条の2の3)。

手元の洗剤について確認したいのは、次の点です。

ひとつ目は、ラベルの絵表示と注意書きです。岡山労働局のリーフレットは、洗剤等の容器のラベルを確認し、所定のマークがあれば化学物質管理者の選任、SDSの入手、リスクアセスメントとその結果に基づく対応などが必要になると案内しています。

ふたつ目は、SDSの3項(組成・成分情報)と15項(適用法令)です。前述の解説テキストは、15項に特化則・有機則、リスクアセスメント対象物、濃度基準値設定物質、皮膚等障害化学物質、がん原性物質などの記載があるかを確かめるよう示しています。成分の含有量が一定未満で対象にならない場合もあるため、最終的には15項と各規定で判断します。

みっつ目は、SDSの作成年月日です。同じテキストは、最新の情報に基づくSDSかを確かめ、必要に応じて調達先に問い合わせて最新版を提供してもらうよう勧めています。対象物質が毎年のように追加されている以上、何年も前に受け取ったSDSのままにしておくのは危うい運用です。

確認の結果、リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場であれば、事業者には次のような義務がかかります。化学物質管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、氏名を見やすい箇所に掲示するなどして周知すること(労働安全衛生規則第12条の5)。洗剤を新しく採用・変更するときや、作業の方法・手順を変えるときにリスクアセスメントを行うこと(同第34条の2の7)。その結果を記録し、次のリスクアセスメントまで(3年以内に次を行ったときは3年間)保存して、作業する労働者に周知すること(同第34条の2の8)。そして、代替物の使用、換気、作業方法の改善、有効な呼吸用保護具の使用などで、ばく露の程度を最小限度にすること(同第577条の2)です。同条にはこのほか、濃度基準値が定められた物質の屋内作業での基準の遵守、必要に応じた健康診断、講じた措置の記録なども定められています。何が必要になるかは扱う物質や作業によって異なるため、具体的な対応はSDSの記載をもとに、所轄の労働基準監督署や専門家にも確認しながら進めてください。

なお、厚生労働省はビルメンテナンス業のトイレ洗浄やシンク洗浄などの作業別に化学物質管理マニュアルを公表しています。トイレ洗浄作業のマニュアルは、作業ごとにばく露濃度を測定しなくてもリスクアセスメントを実施でき、定められた措置を実施することでリスク低減措置を行えるもの、と位置づけられています。客室のトイレ・洗面台の清掃は作業内容が近いため、手順を見直す際の手がかりになります。ただし、マニュアルの想定と実際の作業が一致する場合にのみ適用できる点には注意が必要です。

いちばん避けたいのは洗剤が混ざる事故

客室清掃の化学物質事故で最も警戒すべきなのが、塩素系の洗剤と酸性の洗剤が混ざることです。混ざると塩素ガスが発生します。奈良労働局の補助資料は、塩素ガスが目・鼻・喉の粘膜を激しく刺激し、重症では死亡例もあるとしたうえで、狭い空間(浴室、トイレ)が特に危険だと注意しています。客室のユニットバスやトイレはまさに狭い空間です。

「まぜるな危険」の表示を知っていても、事故は起こります。解説テキストは、意図せず混ざってしまうケースとして次のような場面を挙げています。

酸性洗浄剤でシンクを洗った後、続けて塩素系洗浄剤で洗うと、残っていた酸性洗浄剤と反応するおそれがあります。トイレ洗浄作業のマニュアルも、前回使った洗浄剤が排水ピットに残っている可能性があるため、十分に水を流してから使うよう求めています。

また、「まぜるな危険」の表示がなくても、酸性や塩素系に当たるものがあります。テキストは、クエン酸や酢なども塩素系洗浄剤と反応するおそれがあるとしています。水垢落としにクエン酸系の洗剤を使い、カビ取りに塩素系を使う、という浴室の組み立ては珍しくありません。同じ場所で両方を使うなら、間に十分なすすぎを入れる手順にしておく必要があります。

実際の労災事例にも、同じ形の容器が招いた事故があります。トイレ清掃の際、同一のラベルが貼られた外見が同じ別の容器に洗浄剤を移し替えたところ、多量の泡と強い臭気が発生し、換気はしたものの胸が苦しくなり、塩素ガス中毒と診断された、というものです。テキストはリスク低減措置の例として、トイレやシンクなど異なる場所で使う洗浄剤を統一すること、塩素系薬剤を容器に入れる際は容器を洗ってきれいにしてから入れることなどを挙げています。

ホテルの現場に置き換えると、次のような取り決めが考えられます。酸性と塩素系の洗剤をカートの上で隣り合わせに置かない。同じ箇所で両方を使う場合の順番とすすぎを手順書に書く。塩素の臭いを感じたら、すぐにその場を離れて立ち入りを止める。トイレ洗浄作業のマニュアルも、塩素の臭気を感じた場合はすぐに退避し、立ち入り禁止にするなど二次災害を防ぐよう示しています。あわせて、霧吹きは便器やシンクに直接噴霧すると舞う可能性があるため、スポンジに出して使うよう求めています。吸い込んで息苦しさが続く、意識がもうろうとしているなど症状が重いときは、ためらわず119番通報してください。

小分け容器の表示と希釈のルール

客室清掃では、大容量の原液をスプレーボトルなどに小分けして各フロアへ持ち出すのが一般的です。この小分け容器の扱いにも決まりがあります。

労働安全衛生規則第33条の2は、ラベル表示の対象となる物を容器に入れて保管するとき(法定のラベル表示がされた容器で保管するときを除く)、その物の名称と人体に及ぼす作用を、容器への表示、文書の交付その他の方法で、取り扱う人に明示するよう事業者に求めています。解説テキストによると、取扱い作業中に一時的に小分けしただけの容器や、作業場所へ運ぶために移し替えた容器で保管を伴わない場合は対象外とされています。また「その他の方法」として、使用場所への掲示や一覧表の備え付け、作業手順書による伝達なども可能とされています。ただし、客室フロアのカートやパントリーに置いたまま翌日も使うボトルは、この「保管を伴わない」場合に当たるとは言い切れません。翌日以降も使う小分けボトルには、名称と人体に及ぼす作用を表示しておくのが安全です。

法令上の義務がかかるかどうかにかかわらず、小分け容器への表示は取り違えを防ぐ基本です。トイレ洗浄作業のマニュアルは、小分け容器に「洗浄剤の名称」「人体に及ぼす作用」「希釈倍率」「作成日」「使用場所」「混ぜるな危険(必要に応じて)」を貼付するよう示しています。客室用、浴室用、トイレ用と用途ごとにボトルを分け、表示を外国語でも読めるようにしておくと、多国籍のスタッフが働く現場でも伝わりやすくなります。

希釈・小分けの作業そのものにも注意が必要です。解説テキストは、希釈時の災害の多くは洗剤の飛沫や液だれが身体に付くことで起きているとして、水しぶきが上がらないよう水面近くでゆっくり投入すること、小分け容器に移す際は漏斗を使うこと、希釈後のタンクや容器はなるべく低い位置で保管することを挙げています。原液を扱う希釈作業は、希釈後の作業より有害性が高く、接触した場合は重篤な災害になりうるとも述べています。実際に、棚の上に置いた18L入りの容器から移し替える際にコックが外れ、アルカリ性洗浄剤が腹部や脚にかかった事例や、酸性のトイレ洗剤を小分け容器に詰め替える際に洗剤が跳ねて目に入った事例が紹介されています。

もうひとつ見落とされやすいのが、飲み物との取り違えです。テキストには、希釈済みの洗浄剤が入ったタンクのコックを飲み物と勘違いして開け、誤飲した事例が載っています。リネン庫やパントリーで洗剤の希釈を行うホテルでは、飲み物と洗剤の置き場所をはっきり分け、洗剤は専用の容器に入れて区別できるようにしておくことが大切です。

保護具と教育で手と目を守る

混ざる事故と並んで多いのが、手や目への付着です。労働安全衛生規則第594条の2は、皮膚や眼に障害を与えるおそれなどが明らかな物として厚生労働大臣が定める「皮膚等障害化学物質等」を取り扱う業務に労働者を従事させるとき、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物または保護眼鏡など適切な保護具を使用させるよう事業者に義務づけています。それ以外の化学物質についても、健康障害のおそれがないことが明らかなものを除き、保護具を使用させるよう努めることとされています(同第594条の3)。

トイレ洗浄作業のマニュアルでは、便器や洗面台の洗浄時にニトリルまたはネオプレンゴム(0.2mm厚)の保護手袋とサイドシールド付きの保護眼鏡を着用し、便器の洗浄で酸性の洗浄剤を、洗面台の洗浄でアルカリ性または酸性の洗浄剤を使う場合は、付着の可能性がある部位を覆う防水性の部分防護服(前掛け等)を着用する、といった措置が示されています。希釈・小分けの作業では、フェイスシールドに加えて、付着の可能性がある部位を覆う防水性の部分防護服(前掛け等)とアームカバーの着用が挙げられています。手袋は着ける前に傷や穴がないかを確かめ、脱ぐときは化学物質の付いた面が内側になるように外す、という留意点も添えられています。

リスクアセスメントの結果に基づいて保護具を使わせる事業場では、化学物質管理者とは別に「保護具着用管理責任者」を選任し、保護具の適正な選択・使用・保守管理を担わせる必要があります(労働安全衛生規則第12条の6)。選任の期限は、選任すべき事由が発生した日から14日以内です。また、保護具着用管理責任者は、保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者のうちから選任することとされています(同条第2項第2号)。

万が一のときの対応も、手順として決めておきます。マニュアルは、吸入によりめまいや頭痛などの異常がある場合は速やかに現場から運び出して医師の診断を受けること、皮膚に付いた場合はすぐに拭き取り石鹸水と水で洗い流し、炎症などが出たら速やかに医師の診断を受けること、眼に入った場合はただちに清浄な流水で数分間洗眼してから医師の処置を受けること、強アルカリ性の場合は少なくとも15分間洗眼することを示しています。奈良労働局の補助資料は、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を強アルカリに分類しています。呼吸が苦しい、意識がもうろうとしているなど症状が重いときは、ためらわず119番通報してください。客室フロアのどこで洗眼できるかを、事前にスタッフへ伝えておくと初動が速くなります。

こうした内容は、雇い入れ時の教育で伝えるべき事項にも含まれます。労働安全衛生規則第35条は、雇い入れ時や作業内容の変更時の教育事項として、原材料等の危険性または有害性とその取扱い方法、保護具の性能と取扱い方法、作業手順、事故時の応急措置と退避などを挙げています。神奈川労働局の資料によると、新しい規制に合わせて業種による教育の省略規定が削除され、これらの項目は業種によらず必要になっています。言葉だけでなく、絵表示の意味や手袋の外し方を実物で見せながら教えると、日本語に慣れていないスタッフにも伝わりやすくなります。

清掃を委託しているときの役割分担

客室清掃を外部に委託している場合、清掃スタッフを雇用しているのは委託先です。化学物質管理者の選任、リスクアセスメント、保護具、教育といった事業者としての義務は、基本的にスタッフを雇う委託先が負います。業務委託(請負)では、作業の指示・管理も受託した会社の責任者が行います。なお、ホテル自身も、直営の清掃部門など自社の従業員が洗剤を扱う職場があれば、その範囲では事業者として同じ義務を負うことになります。直営部門を持ちながら作業の一部を請負に出す場合には、皮膚等障害化学物質等を扱う作業について、請負人に保護具を使用する必要がある旨を周知することも求められています(労働安全衛生規則第594条の2第2項)。また、清掃スタッフを人材派遣で受け入れている場合は扱いが異なり、リスクアセスメントやその結果に基づく措置などについて、派遣先であるホテルが事業者としての義務を負います(労働者派遣法第45条第3項)。

それでも、ホテル側に関わりがないわけではありません。労働安全衛生法第3条第3項は、仕事を他人に請け負わせる者に、作業方法や納期などについて、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付けないよう配慮することを求めています。この趣旨からすると、清掃時間を短くするために洗剤を規定より濃く使うよう求める、換気扇を止めたままの作業を前提にする、といった条件を付けるのは避けたいところです。

実務では、次のような点を契約前や稼働前のすり合わせで決めておくと、食い違いが起きにくくなります。洗剤をホテルが支給するのか、委託先が用意するのか。ホテルが支給する場合、そのSDSを委託先に渡せるか。洗剤の置き場所や希釈を行う場所、洗眼できる水回りの場所。換気設備や人感センサー付きの設備など、作業中に注意が必要な設備の情報。洗剤の銘柄を変えるときに、事前に委託先へ伝える流れ。洗剤の変更はリスクアセスメントをやり直すきっかけになるため、黙って切り替えると委託先が手順を見直す機会を逃してしまいます。

ホテル側の要望は、委託先の責任者を通じて現場に反映してもらいます。清掃スタッフに直接「この洗剤を使って」と指示するのではなく、責任者と取り決めた手順を変える、という形にしておくことが、請負の体制を保つうえでも安全管理のうえでも大切です。

客室清掃の委託・体制の見直しはライフスタッフへ

業務用の洗剤は、正しく使えば客室の品質を支える道具ですが、扱いを誤ればスタッフの健康を損なう化学物質でもあります。ラベルとSDSで中身を確かめ、混ざらない手順と小分け容器の表示を決め、保護具と教育で手と目を守る。多くは、日々の手順と取り決めの見直しから始められます。株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃を請負としてお引き受けし、稼働前に清掃基準・手順・備品の位置・報告方法をすり合わせ、スタッフに施設ごとのルールを教育したうえで配置しています。作業の指示・管理は当社の責任者が行い、施設さまのご要望は責任者を通じて現場に反映します。客室清掃の体制や委託範囲の見直しをお考えの際は、お気軽にご相談ください。

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