客室清掃の外国人材はどの制度で受け入れる?宿泊とビルクリーニングの違い
客室清掃の人手が集まらず、外国人スタッフの受け入れを検討されるホテルは増えています。そのときに最初につまずくのが、「どの制度で受け入れればよいのか」という点です。宿泊業だから特定技能の「宿泊」分野だろう、と考えるのが自然ですが、客室清掃を主たる業務として担ってもらう場合、宿泊分野は制度が想定している形と違います。しかも清掃側の分野には、ホテルが自社で受け入れようとすると壁になる条件があります。この記事では、令和8年1月23日に閣議決定された分野別運用方針と、厚生労働省の協議会決定をもとに整理します。
特定技能「宿泊」では客室清掃は関連業務にあたる
宿泊分野の分野別運用方針では、1号特定技能外国人の業務区分は「宿泊」とされ、従事する業務は次のように定められています。
「宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務」
ここに客室清掃は挙がっていません。では清掃には一切関われないのかというと、そうではありません。同じ方針には、こう書かれています。
「なお、いずれの場合も、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:客室清掃、ベッドメイキング、館内販売)に付随的に従事することは差し支えない」
つまり客室清掃とベッドメイキングは「関連業務」という位置づけで、フロントや接客といった主たる業務に就いている人が、付随的に行うぶんには問題ない、という整理です。逆に言えば、客室清掃だけを担う人材として宿泊分野で受け入れることは想定されていません。ここを取り違えたまま採用計画を立てると、後から配置を組み直すことになります。
もうひとつ、清掃を外部に委託しているホテルにとって見落とせない条件があります。同じ運用方針の「特定技能外国人の雇用形態」の項には、次の一文があります。
「直接雇用に限る。」
宿泊分野では、受け入れる施設が自ら雇用する形に限られています。清掃業務を委託しているホテルが、委託先のスタッフを宿泊分野の枠で受け入れる、という組み立てはできません。あわせて、特定技能所属機関に課される条件として、旅館業法第3条第1項の旅館・ホテル営業の許可を受けていることも挙げられています。宿泊分野は、宿泊施設そのものが自社の従業員として受け入れる制度だと理解しておくのが正確です。
客室清掃はビルクリーニング分野の主たる業務に含まれる
では清掃そのものを担う人材はどの分野になるのか。特定産業分野には「ビルクリーニング」があり、1号の業務区分は「ビルクリーニング」、従事する業務は「建築物内部の清掃」と定められています。
ここで気になるのが、ホテルの客室がこれに含まれるのかという点です。この疑問には、厚生労働省の「ビルクリーニング分野特定技能外国人が従事できる業務について」(令和5年10月17日・ビルクリーニング分野特定技能協議会決定第1号)が答えを出しています。
「なお、客室清掃作業も対象に含まれます。また、機器や設備の内部の清掃作業は実施要領の枠から外れるため、対象となりません。」
同じ決定では、客室清掃業務を「床、浴室、トイレ、洗面台等の清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業など、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務」と定義しています。客室清掃は、ビルクリーニング分野の主たる業務として扱われるということです。
ただし同じ決定には、注意しておきたい一文もあります。他の現場で日本人の応援として関連業務のみを行うことは差し支えないとしたうえで、「ただし、当該外国人の労働時間をすべて関連業務として行うことは認められません。」とされています。清掃を主たる業務として組み立てることが前提です。
受け入れられるのは「登録を受けた営業所」に限られる
ここがホテル側にとって最大の分かれ目です。ビルクリーニング分野の運用方針は、特定技能所属機関に課す条件として次のように定めています。
「特定技能所属機関は、都道府県知事より、建築物衛生法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業又は同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所において1号特定技能外国人又は2号特定技能外国人を受け入れることとしていること。」
つまり、この分野で外国人スタッフを受け入れられるのは、建築物清掃業などの登録を受けた営業所に限られます。雇用形態も宿泊分野と同じく「直接雇用に限る。」とされています。
ホテルが自社でこの登録を持っているケースは多くありません。客室清掃を主たる業務として外国人スタッフに担ってもらう体制を組むなら、登録を持つ清掃専門会社に委託するという形が現実的な選択肢になります。制度を調べたうえで自社採用を諦めた、というご相談をいただくのは、たいていこの条件が理由です。
要件そのものも見ておきます。ビルクリーニング分野の1号は「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」の合格が要件で、日本語能力水準は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の水準と認められるもの、とされています。
2号になると、試験は「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級(ビルクリーニング)」のいずれかで、実務経験として建築物内部の清掃に「複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験」が求められます。日本語能力水準はB1相当以上です。現場のリーダー層を想定した設計になっています。
要件は改定されることがありますので、実際に受け入れを進める段階では、最新の分野別運用方針と運用要領を必ずご確認ください。
数字で見る清掃現場の人材事情
制度だけでなく、需給の実態も押さえておくと判断しやすくなります。ビルクリーニング分野の運用方針によると、ビル・建物清掃員の令和6年度における有効求人倍率は2.34倍で、全国的に人材確保が困難な状況にあるとされています。令和10年度には10万6,400人程度のビル・建物清掃員が不足する見込みで、生産性向上と国内人材確保の取り組みを続けてもなお3万9,500人程度の人手不足が見込まれる、という推計が示されています。
そのうえで、令和6年度から5年間の1号特定技能外国人の受け入れ見込数は3万2,200人で、これを令和10年度末までの上限として運用するとされています。不足の見込みに対して、外国人材で埋められる部分は限られているという構図です。
年齢構成についても記載があります。ビルクリーニング分野(一般清掃)の常勤作業員のうち60歳以上の比率は、2000年の34.0%から2023年には46.7%へ増加したとされています(業界調べ)。清掃の現場が高齢層に支えられている構造が、数字として表れています。
制度は「育成就労」を含む形に変わっている
もうひとつ押さえておきたいのが、制度の枠組み自体が動いている点です。分野別運用方針は現在、「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」という名称で、宿泊分野もビルクリーニング分野も、特定技能と育成就労を並べて定める形になっています。根拠となる法律は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」です。
ビルクリーニング分野では、育成就労についても業務区分は特定技能と同一とされ、雇用形態は直接雇用に限ること、受け入れられるのは建築物清掃業などの登録を受けた営業所であることが同じように条件になっています。転籍制限期間は1年とされています。移行にともなう細目は今後も更新されますので、検討の段階では必ず最新の情報をご確認ください。
制度の選択と、現場が回るかどうかは別の問題
ここまで整理したとおり、客室清掃を主たる業務として外国人スタッフに担ってもらうなら、ビルクリーニング分野の枠組みで考えることになり、その受け入れには登録を受けた営業所であることが求められます。ただし制度上の受け入れが可能かどうかと、現場が実際に回るかどうかは別の話です。
清掃は、手順を覚えれば終わりという仕事ではありません。客室ごとの状態を見て判断する場面が多く、チェッカーとの申し送りや、リネンの過不足の報告といったやり取りが日常的に発生します。日本語能力の要件を満たしていても、現場で使う言い回しは別に教える必要があります。図解のマニュアル、やさしい日本語での指示、写真での品質基準の共有といった仕組みを用意できるかどうかで、定着のしやすさは変わります。
受け入れの手続きだけを整えても、教育と品質管理の体制がなければ、結局は既存スタッフの負担が増えるだけになりかねません。制度の検討と同時に、誰がどう教え、どう品質を確認するのかを設計しておくことをおすすめします。
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