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ホテル客室清掃の交差汚染対策|トイレ用具とグラスを分けるルール

ホテル客室清掃の交差汚染対策|株式会社ライフスタッフ

客室清掃で起きてはならないことの一つに、トイレを拭いたクロスや、便器に触れた手袋のまま、グラスや洗面台、電気ポットに触れてしまうことがあります。汚れの強い場所から清潔さが求められる場所へ、道具や手を介して汚れを持ち込んでしまう状態を、ここでは「交差汚染」と呼びます。見た目にはきれいに仕上がっていても起こり得るため、仕上がりの確認だけでは気づきにくいのが厄介なところです。

交差汚染は、スタッフ一人ひとりの注意力に任せていると、忙しい時間帯や慣れない応援スタッフが入った日にほころびが出ます。防ぐには、道具の分け方、清掃の順番、手袋の替え方、グラス類の扱い方を「ルール」として決め、誰が入っても同じように動ける形にしておくことが大切です。この記事では、ホテル・旅館の支配人や運営ご担当者に向けて、国の衛生管理の指針が示している考え方と、現場で決めておきたいルール、清掃を委託するときの確認点を、株式会社ライフスタッフが整理します。なお、嘔吐物の処理のように感染症を想定した対応は、通常の客室清掃とは別の手順になるため、この記事では扱いません。

客室清掃の交差汚染とは|どこからどこへ汚れが移るのか

客室の中には、汚れの度合いがまったく違う場所が隣り合っています。便器やその周りの床は、客室の中でもっとも汚れが強い場所です。一方で、グラスやマグカップ、電気ポット、洗面台の蛇口の周りなどは、宿泊者が口や手で直接触れるため、清潔さがもっとも求められる場所です。ユニットバスの客室では、この二つが同じ空間の中で数十センチの距離にあります。

交差汚染の経路は、大きく分けて次の三つです。一つ目は、クロスやスポンジ、ブラシなどの清掃用具です。便器を拭いたクロスを洗面台に使えば、汚れをそのまま運ぶことになります。二つ目は、手袋や手指です。道具を分けていても、便器に触れた手袋のままグラスを並べれば同じことが起きます。三つ目は、カートやバケツ、洗剤のボトルといった「道具の置き場所や入れ物」です。使用済みの便所用クロスを、未使用のクロスと同じかごに戻していれば、次の客室へ汚れを持ち歩くことになります。

交差汚染は、目で見て確認できる汚れとは性質が違います。髪の毛や水あかは検品で見つけられますが、どのクロスで拭いたかは、仕上がった客室を見てもわかりません。だからこそ、仕上がりの確認とは別に、作業の手順そのものを決めておく必要があります。

「便所の清掃用具は共用しない」という国の指針

清掃用具を分けるという考え方は、現場の工夫というだけでなく、国が示している衛生管理の指針にも書かれています。

厚生労働省が都道府県などに示している「旅館業における衛生等管理要領」(令和8年1月20日付の一部改正を反映した版)では、旅館・ホテル営業の施設設備の基準のうち便所の項目に、「便所の清掃用具はその他の清掃用具と共用しないこと。」と書かれています。また、同じ要領のうち、清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置の基準を定めた部分では、便所の管理として、便器の汚れを十分に除去するなど1日1回以上清掃し、必要に応じて消毒して、常に清潔で衛生的に保つこととされています。あわせて、座便式の便器で人に直接触れる便座の部分は、1日1回以上消毒し、客室に付設されたものについては消毒後にその旨を表示することが望ましいとされています。

飲食に使う器具についても記載があります。要領には、客室に水差しやコップなど飲食用の器具を備える場合は、清潔で衛生的なものを置き、衛生的なものである旨を表示することが望ましいとされています。また、洗面所にくしやヘアブラシを備える場合は、置き場所を消毒済みのものと使用後のものに分けることが望ましいとされています。清潔なものと使用後のものを混ぜない、という考え方は、グラスやポットの扱いにもそのまま当てはまります。

建築物の衛生管理の分野でも同じ考え方が示されています。旅館業の要領は、3,000平方メートル未満の施設については努力義務としたうえで、建築物衛生法にもとづく「建築物環境衛生管理基準」を守ることも求めています。そして、建築物の維持管理について厚生労働省が指導の指針として示している「建築物環境衛生維持管理要領」には、ほうきやモップなどの清掃用器具は清潔なものを用い、「汚染度を考慮して区域毎に使い分ける等」、その使用と管理を適切に行うことが書かれています。

なお、これらの要領は、国が自治体に示している技術的な助言です。旅館業の衛生について営業者が守るべき具体的な基準は、旅館業法にもとづいて都道府県などが条例で定めており、書き方は自治体によって異なります。自施設に当てはまる基準は、所管の保健所に確認するのが確実です。

色分けだけでは防げない|交差汚染が起きやすい4つの場面

クロスを用途ごとに色分けする方法は、よく知られた工夫です。色分けは有効ですが、それだけで交差汚染が防げるわけではありません。現場で起きやすいのは、次のような場面です。

場面1 色のルールが人によって違う

「青は洗面台、赤はトイレ」と決めていても、新しいスタッフや応援スタッフに伝わっていなかったり、以前の職場のルールと混同したりすると、取り違えが起きます。クロスが足りなくなったときに、手近な別の色で代用してしまうのもよくある崩れ方です。

場面2 手袋を替えずに次の作業へ移る

道具を正しく分けていても、便器を清掃した手袋のまま、グラスの補充やベッドメイクに移ってしまえば意味がありません。手袋を替えるタイミングが決まっていないと、忙しい時間帯ほど省かれやすくなります。

場面3 カートやかごの中で混ざる

使用済みの便所用クロスを、未使用のクロスや他の用途のクロスと同じかごに戻すと、カートの中で汚れが移ります。便器用のブラシを、洗面台用のスポンジと同じバケツに入れて運ぶのも同じです。道具そのものを分けていても、置き場所が分かれていなければ交差汚染は起こります。

場面4 グラスやポットを客室の洗面台で洗う

客室のグラスやマグカップを、その場で客室の洗面台ですすいで拭き上げる運用は、交差汚染の点でもっとも注意が必要な場面の一つです。洗面台とトイレが同じ空間にある客室では特に、どのスポンジで洗い、どのクロスで拭いたのかを後から確かめることはできません。

客室清掃で決めておきたい使い分けと手順のルール

交差汚染を防ぐルールは、細かく作り込むほど良いというものではありません。忙しい時間帯でも守れる、単純でわかりやすいルールにすることが大切です。決めておきたいのは、次の5つです。

用具の区分を決める

少なくとも「便器・便所の床」と「それ以外」は、クロス、スポンジ、ブラシ、手袋、バケツのすべてを分けます。そのうえで、施設の設備に合わせて「浴室・洗面台」「客室の家具や備品」「グラス・ポットなど口に触れるものの周り」と区分を増やしていきます。区分ごとの色を決めたら、写真付きの一覧にしてリネン庫やパントリーに掲示しておくと、応援スタッフにも伝わります。

清掃の順番を決める

交差汚染の点で大切なのは、便器の作業のあとに、手袋や用具を替えないまま清潔な場所へ戻らないことです。そのための組み方の一つが、ベッドメイクや家具の拭き上げ、グラス類の入れ替えを先に済ませ、浴室・洗面台、便器の順に進める方法です。一方で、浴室や洗面台を先に仕上げる手順や、最初に便器へ洗剤をかけておき、ほかの作業の間に汚れを浮かせる手順を取っている現場もあります。どの順番でも、便器に触れたあとに手袋と用具を替える区切りを手順の中に組み込んでおくことで、交差汚染を防ぎやすくなります。客室の間取りや作業の分担に合わせて、施設ごとに手順書に落とし込んでおきます。

手袋を替えるタイミングを決める

「便器の清掃が終わったら手袋を外して捨て、手を洗ってから次の作業に移る」「グラスやポットに触れる前には新しい手袋にする」など、替える場面を作業の区切りに結びつけて決めます。タイミングを「必要なときに」とだけ決めると、判断が人によって分かれてしまいます。

カートの置き場所を分ける

便所用の用具は、専用の袋やケースに入れてカートの決まった位置に置き、未使用のクロスやリネン、アメニティとは触れないようにします。使用済みのクロスは用途ごとに回収袋を分け、客室の中で他の用途のものと混ぜないようにします。洗浄して乾かしたクロスを戻すときも、用途ごとの保管場所に戻すところまでをルールにしておきます。

グラス・ポットの扱いを決める

グラスやマグカップは、客室で洗わず使用済みのものを回収し、洗浄済みのものと入れ替える運用にすると、交差汚染の心配を減らせます。回収したグラスをどこで、どのように洗うかは、施設の設備や人の配置によって決める必要があります。客室で洗わざるを得ない場合は、グラス専用のスポンジとクロスを決め、便所用の用具とは保管場所から分けておきます。電気ポットやケトルの中は、宿泊者が何を入れたかがわからない場所でもあるため、においや異物の確認を清掃手順に入れておくと安心です。

多国籍スタッフ・応援スタッフにも伝わるルールの形

交差汚染のルールは、ベテランのスタッフほど体に染みついている一方で、入ったばかりのスタッフや応援で入るスタッフには伝わりにくいものです。日本語が母語ではないスタッフが多い現場では、言葉の説明だけに頼らない伝え方が欠かせません。

効果的なのは、色と実物の写真を組み合わせることです。「この色のクロスはこの場所だけ」という対応を、実際の客室の写真に色の印をつけて示せば、言葉がわからなくても理解できます。手袋を替える場面も、「便器の作業が終わったら」「グラスに触る前」のように、作業の区切りを写真で示しておくと伝わりやすくなります。

もう一つ大切なのは、ルールを守っているかを確認する仕組みです。仕上がった客室を見るだけでは、どのクロスを使ったかはわかりません。現場の責任者が作業中の客室に立ち会って、カートの中の用具の置き方や、手袋を替えるタイミングを確認する時間を定期的につくると、崩れかけたルールに早く気づけます。清掃を委託している場合は、ホテルの担当者が委託先のスタッフに直接確認・指示するのではなく、委託先の責任者が確認し、その結果を報告してもらう形にします。確認の結果は、スタッフを責めるためではなく、ルールがわかりにくくないか、用具の数が足りているかを見直す材料として使います。

用具の数が足りないことは、ルールが崩れる大きな原因です。色分けしたクロスが途中で足りなくなれば、スタッフは別の色で代用するしかなくなります。1日に担当する客室の数に対して、用途ごとのクロスや手袋が十分に用意されているかも、あわせて見直しておきたい点です。

客室清掃を委託するときに確認したい交差汚染のポイント

客室清掃を外部に委託している場合や、これから委託を考えている場合は、交差汚染のルールを「委託先に任せたから大丈夫」とせず、契約前のすり合わせで確認しておくことをおすすめします。確認しておきたいのは、次のような点です。

まず、用具と資材をどちらが用意するのかです。クロスや手袋、洗剤をホテル側で支給するのか、委託先が用意するのかによって、色分けのルールを誰が決め、足りなくなったときに誰が補充するのかが変わります。自社スタッフと委託先のスタッフが同じ館内で働く場合は、色のルールが食い違わないよう、どちらのルールにそろえるのかも決めておきます。

次に、グラスやポットの洗浄が委託の範囲に入るかどうかです。客室の中で扱うのか、回収して別の場所で洗うのか、洗浄はホテル側の担当なのかによって、手順も必要な人手も変わります。範囲があいまいなまま始めると、忙しい日に「誰がやるのか」がはっきりせず、客室で簡単にすすいで済ませる運用に流れやすくなります。

そして、交差汚染にかかわる項目が、清掃手順と検品の項目に入っているかです。仕上がりの確認項目は、髪の毛やほこり、水あかといった目に見えるものが中心になりがちです。用具の使い分けや手袋の交換のように、仕上がりからは見えない作業をどう確認し、どう報告してもらうのかまで、あらかじめ決めておくと安心です。

交差汚染を防ぐ客室清掃の体制づくりはライフスタッフへ

交差汚染は、仕上がった客室を見ただけではわからないからこそ、道具の分け方、清掃の順番、手袋の替え方、グラス類の扱い方を手順として決め、誰が入っても同じように動ける状態をつくることが大切です。自施設に当てはまる衛生の基準は自治体の条例で定められていますので、あわせて所管の保健所にもご確認ください。

株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃を中心に、全国の宿泊施設の清掃をお引き受けしています。稼働前に施設ごとの清掃基準・手順・備品の位置・報告方法をすり合わせ、スタッフへの教育を行ったうえで現場に配置し、チェック項目にもとづく検品をしてから客室をお返しします。用具の使い分けのような細かなルールも、手順のすり合わせの中でご相談ください。清掃体制の見直しや委託のご検討も、まずはお気軽にお問い合わせください。

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