ホテル客室の結露とカビ対策|冬の窓まわり清掃と換気のポイント
冬になると、朝の客室清掃で窓ガラスが水滴でびっしり、サッシの下に水が溜まり、カーテンの裾がしっとりしている、という場面が増えてきます。拭けば消える汚れのように見えますが、結露は放っておくとカビの原因になり、窓枠のゴムパッキンやカーテン、壁紙の黒ずみとして客室に残ります。
この記事では、ホテル・旅館の支配人や運営担当者の方に向けて、冬の客室で結露が起きる仕組み、法令や国の衛生等管理要領での位置づけ、客室清掃で無理なくできる結露・カビ対策と、カビを見つけたときの扱い方を整理します。湿度の目安などは保健所や法令の記載をもとにまとめていますので、施設の状況に合わせて読み替えてください。
冬の客室で結露が起きやすい理由
札幌市保健所のページでは、結露を「空気が冷たい窓ガラスや壁などの表面に触れて温度が下がり、空気中の水分が水滴となる現象」と説明しています。外が冷え込み、室内は暖房で暖かく、空気中に水分が多いほど、窓や外壁側の壁で水滴ができやすくなります。
同じページでは、空気の流れが悪いと部屋の隅などで結露が起きること、暖房している部屋の暖かい空気が暖房のない寒い部屋に流れ込むと冷やされて結露することも挙げられています。家庭向けの説明ですが、ホテルの客室に置き換えると、次のような場面が思い当たります。
・宿泊者が暖房を強めにしたまま就寝し、朝方に窓だけが冷え切っている
・加湿器や加湿機能付きの空気清浄機を一晩中使っている
・入浴後に浴室のドアを開けたままにして、湯気が客室側に流れている
・連泊の宿泊者が、洗濯した衣類を客室内に干している
・カーテンを閉め切っていて、窓とカーテンの間に空気がこもっている
・ベッドやソファ、荷物台が外壁側の壁に寄せて置かれている
・空室にしている間は暖房を止めていて、隣の客室や廊下との温度差が大きい
どれも宿泊者の過ごし方として自然なことなので、「結露を出さないでください」とお願いするのは現実的ではありません。施設側でできるのは、結露が起きやすい客室や場所を把握し、毎日の客室清掃で水分を残さないこと、カビにつながる前に気づける仕組みを作ることです。
結露を放っておくとカビ・ダニの温床になる
札幌市保健所のページでは、結露は「カビを繁殖させたり、家屋を傷めたり」するとされ、カビについては、温度、水分、栄養などの条件がそろったときに急速に増殖し、カビを餌にするダニの増殖やアレルギーの原因になると説明されています。同ページの「カビの好む環境」の目安は、室温20〜25℃、湿度70%以上、暗い場所です。
また、カビが繁殖しやすい場所として、水をよく使う台所・浴室・トイレ、水滴が発生しやすい冷蔵庫・窓・押入れ・家具の裏の壁面、栄養分が豊富なじゅうたん・畳などが挙げられています。客室でいえば、窓まわり、カーテン、浴室、冷蔵庫の周辺、ベッドや家具の裏、和室の畳や押し入れが、気をつけたい場所にあたります。
客室の窓まわりで特に汚れが残りやすいのは、次のような箇所です。
・窓ガラスの下端と、サッシのレール(水が溜まり、ほこりと混ざって黒ずむ)
・窓ガラスを押さえるゴムパッキン(一度黒い点が付くと、表面を拭いても落ちにくい)
・カーテン、特にレースカーテンの裾(窓に触れたまま濡れ、乾かないまま次の夜を迎える)
・窓下の壁紙と巾木(水が伝って染みになる)
・窓際に置いたテーブルや椅子の脚まわり
こうした黒ずみは、清掃しても「掃除が行き届いていない部屋」に見えてしまいます。宿泊者が窓を開けたりカーテンを引いたりしたときに目に入る場所でもあるため、清潔感の面でも早めの対処が大切です。
旅館業法と衛生等管理要領での「防湿」と「換気」の位置づけ
結露やカビへの備えは、法令の上でも宿泊施設の衛生の一部として扱われています。旅館業法第4条第1項は「営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。」と定めています。同条第2項で、その措置の基準は都道府県が条例で定めることになっています。
厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」は、この条例づくりなどの参考として国が示しているものです。要領では、施設設備の基準として「施設は、適当な防湿及び排水の設備を有すること。」とされ、宿泊者の衛生に必要な措置の基準の項目では、換気について「換気設備は、適切に清掃し、換気用の開口部は、常に開放すること。」とされています。
冬場は、宿泊者が寒さや風の音を気にして、客室の給気口を閉じてしまうことがあります。給気口が閉じたままだと室内の湿気が逃げにくくなるため、客室清掃の際に給気口の開閉状態を確認し、閉じていれば施設のルールに沿って開けておく、という確認を手順に入れておくと安心です。給気口の扱いは建物や設備によって違いますので、設備担当の方に確認したうえで決めてください。
あわせて、旅館のほか店舗・事務所などの用途に使う部分の延べ面積が合わせて3,000平方メートル以上の建物(建築物衛生法の特定建築物)に入るホテル・旅館では、空気調和設備を設けている場合、居室の相対湿度を「おおむね」40%以上70%以下に保つよう空気を調節することが、建築物衛生法施行令第2条第1号イで定められています。この基準を守るのは、建物の維持管理について権原を持つ人(所有者など)です。ただし、この湿度の基準は空気調和設備を設けている場合のもので、機械換気設備だけの場合は湿度の項目は対象外です。また、衛生等管理要領では、3,000平方メートル未満の施設は建築物環境衛生管理基準の遵守が努力義務とされています。
実際の基準は施設がある都道府県(保健所を設置する市や特別区を含みます)の条例で決まりますので、具体的な求めは管轄の保健所で確認してください。
客室清掃でできる結露・カビ対策の手順
結露は毎晩のように発生するため、特別な作業を足すより、毎日の客室清掃の流れの中で「水分を残さない」「早めに気づく」ことを習慣にするのが効果的です。板橋区保健所のページでも、カビを増やさないための方法として「窓ガラスの結露水をふきとる」「換気(風通し)をよくする」ことが挙げられています。冬場の客室清掃では、次のような順番が取り入れやすいでしょう。
1.入室したら、まずカーテンを開けて窓まわりの状態を見る(ガラスの水滴、サッシの水溜まり、カーテンの裾の湿り)
2.施設のルールで認められていれば、窓や換気扇で客室の換気を始めてから作業に入る
3.窓ガラスの水滴を、ガラスの上から下へ、専用のクロスやスクイージーで集めて拭き取る
4.サッシのレールとゴムパッキンに残った水を、乾いたクロスで吸い取る(水を広げるだけの拭き方にしない。黒い点=カビがある箇所は乾いたクロスでこすらず、後述の「カビを見つけたときの扱い方」に沿って対応する)
5.カーテンの裾が濡れていれば窓から離して乾かし、湿りが続く場合や染みがある場合は記録して報告する
6.ベッドや家具が外壁側の壁に密着していないか、裏の壁が湿っていないかを確認する
7.給気口が閉じられていないか、浴室の換気扇が止まっていないかを確認する
8.最終チェック(検品)で、窓まわりの水分の残りと黒ずみの有無を確認する
結露の拭き取りに使うクロスは、客室の他の場所を拭くクロスと分けておくと、水分や汚れを別の場所に移さずに済みます。濡れたクロスを客室に置き忘れたり、湿ったままカートに積み重ねたりすると、それ自体がにおいやカビのもとになるため、回収と乾燥のルールもあわせて決めておきましょう。
また、加湿器を客室に備えている施設では、加湿器の水の扱いにも注意が必要です。加湿器はタンク内などでレジオネラ属菌をはじめとする微生物が繁殖しやすく、厚生労働省のレジオネラ症の予防に関する技術上の指針では、卓上用や床置き式の「家庭用加湿器」について「タンクの水は、毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃すること」とされています。客室に置く加湿器もこれを目安に、機器の取扱説明書とあわせて、給水・清掃を誰がいつ行うかを決めておきましょう。
カビを見つけたときの扱い方と注意点
窓のゴムパッキンや壁紙に黒い点を見つけたとき、急いで落とそうとして逆に広げてしまうことがあります。札幌市保健所のページでは、繁殖箇所を「よくしぼった雑巾で静かにふき取ります」としたうえで、いきなり乾いた雑巾で拭く、掃除機をかける、スプレータイプの薬剤をいきなり吹きかける、といった方法はカビの胞子が飛び散り、かえって広がってしまうと注意しています。
カビの除去には、市販のカビ取り剤や消毒用アルコールなどを使いますが、同ページでは、薬剤で壁紙などが変色することがあること、完全に除去できないこともあることも書かれています。板橋区保健所のページでは、除去するときは窓を開けて換気に注意し、ゴム手袋やマスクなどをすることが勧められています。
薬剤を使うときに特に気をつけたいのが、洗剤の組み合わせです。両方の保健所のページで、塩素系のカビ取り剤と酸性タイプの洗浄剤を混ぜると塩素ガスが発生して危険だと注意されています。客室清掃では浴室やトイレ用に酸性の洗浄剤を使うこともあるため、同じ場所で続けて使わない、容器を詰め替えない、製品の表示とSDS(安全データシート)を確認する、といったルールを清掃スタッフ全員で共有しておくことが大切です。
清掃スタッフが対応する範囲と、施設側で判断する範囲も分けておきましょう。
・表面の軽い汚れ:清掃手順の中で、決められた方法と薬剤で対応する
・ゴムパッキンの奥まで入った黒ずみ、広い範囲の壁紙のカビ、カーテンの染み:写真を撮って記録し、施設の担当者に報告する
・壁の内側からの染みや、同じ場所で何度も出るカビ:設備の点検や修繕、専門業者への依頼を含めて施設側で判断する
清掃を外部に委託している場合は、手順の追加や報告の流れを委託先の責任者と取り決め、責任者を通じて現場に反映してもらう形になります(施設側から委託先の清掃スタッフへ直接指示する形にはしません)。
札幌市保健所のページでも、カビの被害が大きい場合は専門業者に除去を依頼するよう書かれています。また、板橋区保健所のページでは、一般塗料で塗り替えると、塗料に含まれる栄養分と水分が補給されてカビの被害が広がることがあると注意されています。見た目を急いで整えるために上から塗る、といった対処は避けたほうがよいでしょう。
結露とカビを繰り返さないための運用のポイント
札幌市保健所のページでは、繁殖したカビを除去しても、元の環境のままであれば短期間で再び繁殖するとされています。拭き取りで終わらせず、結露が起きにくい環境に近づけることも考えたいところです。
板橋区保健所のページでは、カビの繁殖を防ぐには室内の湿度を60%以下に保つことが有効とされ、あわせて湯気をすぐ外に排気する、室内に洗濯物を干さない、住居内の温度差を少なくする、家具を壁から5センチメートル程度離す、といった方法が挙げられています。家庭向けの目安ではありますが、客室でも取り入れやすいものが多くあります。
・結露やカビが出やすい客室を一覧にしておく(北側、角部屋、外壁に面した窓が大きい部屋など、施設ごとの傾向をつかむ)
・清掃記録に「窓まわりの結露の程度」「黒ずみの有無」の欄を設け、冬の間の変化を追えるようにする
・家具の配置を見直し、ベッドやソファを外壁側の壁から少し離して置く
・空室が続く客室は、定期的に換気して空気の入れ替えをする
・浴室の換気扇や給気口の不具合は、清掃スタッフから設備担当へすぐ伝わる流れにしておく
・連泊の宿泊者が多い時期は、館内の案内で浴室の換気や加湿器の使い方をお知らせすることも検討する
窓の断熱や換気設備の改修は設備投資の判断になりますが、毎日の客室清掃で集めた記録があれば、どの客室から手を入れるべきかを判断する材料になります。清掃は結露を「消す」だけでなく、客室の状態を毎日見て記録できる立場でもあります。その情報を施設の運営に生かせる形で残しておくことが、冬の客室の品質を保つうえで役に立ちます。
冬の客室清掃と清掃基準づくりはライフスタッフへ
結露やカビへの備えは、特別な作業よりも、毎日の客室清掃の中で窓まわりを確認し、水分を残さず、気づいたことを記録して伝える、という基本の積み重ねが中心になります。株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃を全国で受託しており、施設さまごとの清掃基準づくりや清掃後の検品体制の整備もお手伝いしています。清掃後の状態のご報告は、方法をご希望に応じて決めていただけます。窓まわりの拭き上げや確認項目を清掃手順に組み込みたい、冬場の清掃の品質を見直したいといったご相談も、お気軽にお問い合わせください。