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COLUMN

ベッドメイクの腰痛と転倒を防ぐ|高年齢スタッフに配慮した客室清掃の対策

ベッドメイクの腰痛と転倒を防ぐ|株式会社ライフスタッフ

客室清掃は、ベッドメイク、浴槽やトイレの拭き上げ、ベッド下の掃除機がけ、リネンの運搬と、腰を曲げたりひねったりする動作が一日に何度も繰り返される仕事です。濡れた浴室の床や、カーテンを閉めたままの薄暗い客室、コード類が出ている床など、足元の危険も少なくありません。腰痛や転倒で清掃スタッフが休むと、その日の客室回しがそのまま苦しくなります。

この記事では、ホテル・旅館の支配人や運営ご担当者に向けて、客室清掃の腰痛と転倒を減らすための考え方を、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」と、2026年(令和8年)4月1日から適用されている「高年齢者の労働災害防止のための指針」をもとに、株式会社ライフスタッフが整理します。清掃を自社のスタッフで行っている場合と、外部に委託している場合とで、ホテル側が決めておくことも分けてご紹介します。なお、個々のスタッフの体調や治療に関わる判断は、医師や産業医など専門家の意見を踏まえて行うものです。

客室清掃で腰痛と転倒が起きやすい理由

腰痛予防対策指針とその解説は、腰に負担のかかる「不自然な姿勢」として、上半身が前に傾く前屈、膝を曲げて立つ中腰、上半身と下半身の向きが異なるひねり、体を後ろに傾けながらねじる姿勢、しゃがむ・かがむ姿勢を挙げています。客室清掃に当てはめると、次のような場面が思い浮かびます。

・ベッドの足元でシーツの端をマットレスの下に入れ込むときの前屈と中腰
・ツインルームで2台のベッドの間に入り、体をひねりながらシーツを整える動作
・浴槽の内側や洗い場の床を、かがんだ姿勢のまま拭き上げる作業
・ベッド下や家具のすき間に掃除機を差し込む動作
・使用済みリネンをまとめた袋を持ち上げ、カートやシュートへ運ぶ作業

一つひとつは短い動作でも、1室ごとに同じ動きを繰り返し、それが担当する室数だけ積み重なります。しかも客室清掃は、チェックアウトからチェックインまでの限られた時間で仕上げる仕事です。急いでいるときほど、膝を曲げずに腰だけで持ち上げる、体ごと向きを変えずに上半身だけをひねる、といった動きになりがちです。

転倒の危険も、客室の中に点在しています。清掃中の浴室は床が濡れていますし、客室の照明を一部しかつけずに作業すると足元が見えにくくなります。延長コード、客室の段差、リネン庫や従業員通路の出入口の段差、狭い通路に置かれたカートや備品も、つまずきの原因になります。

年齢を重ねたスタッフが支える清掃現場と2026年4月からの指針

清掃の現場では、年齢を重ねたスタッフが多く働いています。出入国在留管理庁が公表している特定技能のビルクリーニング分野の運用方針には、ビルクリーニング分野(一般清掃)の常勤作業員について、60歳以上の従業員の比率が2000年の34.0%から2023年の46.7%に増加しているという業界調べの数字が示されています。ホテルの客室清掃だけを取り出した数字ではありませんが、清掃の仕事を年齢を重ねた方が支えている現状がうかがえます。

こうしたなか、労働安全衛生法に第62条の2が設けられ、「事業者は、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。」と定められました。あわせて厚生労働大臣が公表した「高年齢者の労働災害防止のための指針」が、2026年(令和8年)4月1日から適用されています。条文のとおり、事業者が講ずるよう「努めなければならない」措置、いわゆる努力義務です。

この指針は、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、高年齢者の特性を考慮した作業の管理などを挙げたうえで、リスクを下げる措置を検討する順番も示しています。まず危険な作業をなくしたり変えたりすること、次に手すりの設置や段差の解消などの設備面の対策、その次にマニュアルの整備などの管理面の対策、最後に身体の負担を軽くする個人用の装備、という順番です。「腰痛ベルトを配る」「気をつけるよう声をかける」といった対策から入るのではなく、作業そのものと職場の環境から見直すという考え方は、客室清掃でもそのまま使えます。

また指針は、飲食店や社会福祉施設などを例に、家庭生活と同じような作業をするために危険を認識しにくいものの、作業の頻度や環境の違いから家庭とは異なるリスクがあることに注意を促しています。ベッドを整える、浴室を洗うといった客室清掃の作業も家庭の家事に近く、同じように「危ない仕事」と意識されにくい面があると考えられます。

なお、ここでいう「事業者」は、原則として清掃スタッフを雇用している事業者です。自社のスタッフで客室清掃をしているホテルではホテル自身が、清掃を業務委託(請負)している場合は、スタッフを雇用している委託先が、スタッフに対する措置を講じる立場になります。ただし、派遣スタッフを受け入れて客室清掃をしている場合は、労働者派遣法第45条により、派遣先のホテルも第62条の2などの規定について事業者とみなされます。業務委託している場合のホテル側の役割は、後ほどご説明します。

ベッドメイクの腰痛を減らす作業の見直し

腰痛予防対策指針は、作業姿勢について、「前屈、中腰、ひねり、後屈ねん転等の不自然な姿勢を取らないようにすること。」としたうえで、前屈や中腰の姿勢は膝を着いた姿勢に置き換える、ひねる動作は体ごと向きを変えて正面を向いて行う、作業する対象にできるだけ体を近づける、といった工夫を示しています。避けられない場合は、前屈やひねりの程度を小さくし、その頻度と時間を減らすこと、台に寄りかかったり壁や床に手や膝を着いたりして体を支えることも挙げられています。

ベッドメイクに当てはめると、たとえば次のような見直しが考えられます。

・シーツをマットレスの下に入れ込むときは、腰を曲げたままにせず、片膝を床に着いて行う手順にする
・ベッドの角ごとに立つ位置を決め、上半身だけをひねらずに、足を運んで体ごと向きを変える
・ベッドを壁から離して作業する場合の動かし方や、動かさずに仕上げる手順を客室タイプごとに決めておく
・浴槽の内側や床は、柄の長い道具を使うか、膝を着いて体を近づけて拭く

一人で抱え込まない体制も大切です。腰痛予防対策指針は、腰に過度の負担がかかる作業では「無理に1人で作業するのではなく、複数人で作業できるようにすること」としています。大きなベッドのベッドメイクや、重い家具を動かす作業は二人一組で行う、といったルールがあると、急いでいる日でも一人で無理をする場面を減らせます。

重いものの運搬にも目安があります。腰痛予防対策指針は、「満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること。」とし、女性はさらに男性が取り扱うことのできる重量の60%くらいまでとしています。使用済みのリネンやタオルは水分を含むと思った以上に重くなります。袋に詰める量の上限を決めておく、台車やカートを使って持ち上げる回数そのものを減らす、といった運用が考えられます。

こうした動き方は、一人ひとりの心がけに任せるのではなく、手順として決めておくことが重要です。腰痛予防対策指針は、作業動作、作業姿勢、作業手順、作業時間などについて作業標準を定め、定期的に確認し、新しい機器や設備を入れたときにも見直すことを求めています。休憩時間に姿勢を変えること、同じ姿勢の作業や反復作業が続かないよう他の作業と組み合わせることも挙げられています。客室清掃でいえば、ベッドメイクだけを続けて何室もこなす割り振りを避け、浴室やアメニティの補充など別の作業を間に挟む順番にするといった工夫です。

高年齢者の労働災害防止のための指針も、高年齢者の特性を踏まえて、ゆとりのある作業スピードや無理のない作業姿勢に配慮した作業マニュアルを策定し、または改定することや、身体的な負担の大きな作業では定期的な休憩を取り入れることを挙げています。チェックインに間に合わせるために作業スピードだけを求めると、この考え方と正面からぶつかります。自社のスタッフで清掃している場合、1室あたりの標準時間や1人あたりの担当室数を決めるときは、年齢や経験に幅のあるスタッフが無理なく続けられる水準かどうかも確かめておきたいところです。

転倒を減らす客室とバックヤードの環境づくり

転倒の対策では、スタッフの注意よりも先に、環境の側で危険を減らすことが基本です。高年齢者の労働災害防止のための指針は、次のような対策を例として挙げています。

・視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保し、照度が極端に変わる場所をなくす
・階段には手すりを設け、できるかぎり通路の段差を解消する
・床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材を採用し、滑りやすい箇所で作業するスタッフには防滑靴を使ってもらう
・段差や滑りやすい箇所を解消できない場合は、安全標識や危険箇所の掲示で注意を促す

滑りについては、指針に「滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること。」とも書かれています。清掃スタッフにとっては、自分が作業している浴室や洗面所の床そのものが滑りやすい場所です。浴室の床を洗ったあとは水気を切ってから次の作業に移る、濡れた床の上で重いものを持たない、といった手順を決めておくと、腰痛と転倒の両方の予防につながります。

客室とバックヤードの環境では、たとえば次の点を見直す価値があります。

・清掃中は客室の照明をすべてつけ、カーテンも開けて足元が見える状態で作業する
・リネン庫、従業員用エレベーターの前、従業員通路の段差や照明の暗い箇所を洗い出す
・カートや回収袋、備品の段ボールを通路に置いたままにしない置き場所を決める
・破れたカーペットや浮いた床材、切れた照明を見つけたときの報告先と、直すまでの目印を決めておく

腰痛予防対策指針も、機器や設備の配置、整理整頓が不十分で雑然とした作業空間や狭い作業空間は、腰痛の発生や悪化につながりやすいとしています。リネン庫の棚の高さや、よく使う備品を置く位置も、かがまずに取り出せるかどうかという目で見直すことができます。

夏場の暑さにも注意が必要です。高年齢者の労働災害防止のための指針は、高年齢者は暑さや水分不足を感じにくく、暑さに対する体の調節機能も低下しているとして、涼しい休憩場所を整えて利用を勧めること、通気性のよい服装を用意すること、意識的な水分補給を勧めることなどを挙げています。チェックアウト後の客室は空調が止まっていることもあるため、清掃スタッフが休憩できる場所と水分補給の段取りも、あわせて確かめておくと安心です。

また、労働安全衛生規則第612条の2は、暑熱な場所において連続して行われる作業など、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、熱中症の自覚症状や疑いを報告させる体制を整えること、作業からの離脱や身体の冷却など症状の悪化を防ぐ措置とその手順を作業場ごとに定めることを、事業者に義務づけ、いずれも作業に従事する人に周知させることとしています。こちらは努力義務ではありません。厚生労働省の通達(令和7年5月20日付け基発0520第6号)では、対象となる作業を、WBGT(暑さ指数)が28度以上または気温が31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業としています。客室清掃がこれに当たるかどうかは、その日の暑さや作業の条件によって変わるため、夏場に入る前に確認しておきたい点です。同じ通達は、これに当たらない場合でも、作業強度や着衣の状況によっては熱中症のリスクが高まるため、規則に準じた対応に努めるよう求めています。通達の別添に示された手順の例では、返事がおかしい、ぼーっとしているなど普段と様子が違う場合も異常があるものとして扱い、医療機関への搬送や救急隊の要請につなげること、判断に迷う場合は#7119などを活用して専門機関や医療機関に相談すること、搬送までの間や様子を見ている間は一人にしないことが示されています。客室清掃は一人で客室に入って作業することも多いため、具合が悪くなったスタッフに誰が気づき、誰に連絡するかも手順に入れておきたいところです。

清掃を委託しているホテルが決めておくこと

清掃を業務委託(請負)している場合、スタッフの作業手順や教育、健康状態の把握といった措置は、スタッフを雇用している委託先が担うものです。そのうえで、ホテル側にも関わる部分があります。

一つ目は、発注者としての配慮です。労働安全衛生法第3条第3項は、「建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。」と定めています。清掃を依頼する側として、極端に短い作業時間や、人数に見合わない室数を条件にしていないかは、確かめておきたい点です。

二つ目は、施設の環境です。照明、段差、床材、リネン庫や従業員通路の配置は、多くの場合ホテル側が管理しています。委託先から危険箇所の報告があったときに、誰が受けて、いつまでにどう対応するかを決めておくと、同じ場所でのつまずきやけがを繰り返さずに済みます。

三つ目は、伝え方です。委託先のスタッフに対して、ホテルの社員が作業の進め方を直接指示する形は、請負の契約と実態が食い違う、いわゆる偽装請負と見られるおそれがあります。清掃の手順や人員の組み方で気になる点があるときは、委託先の責任者に伝え、委託先から現場に反映してもらう流れにしておくのが基本です。

あわせて、委託先を選ぶときや契約を見直すときには、作業手順の中で腰への負担をどう減らしているか、けがやヒヤリハットをどう共有しているかを聞いておくと、委託先の考え方が見えてきます。

客室清掃の作業手順と人員配置の見直しはライフスタッフへ

腰痛や転倒を減らす取り組みは、スタッフに無理をさせないことと、決まった時間で客室を仕上げることを両立させる取り組みでもあります。ベッドメイクの手順、二人一組の組み方、1人あたりの担当室数、リネンや備品の置き場所と動線は、どれも客室清掃の段取りそのものです。

株式会社ライフスタッフは、ホテル・旅館の客室清掃を全国で受託しているほか、清掃基準・作業手順の策定や見直し、人員配置・シフト設計、清掃フロー・動線の改善、スタッフ教育・研修の設計といった清掃オペレーションのコンサルティングにも対応しています。「今のベッドメイクの手順や室数の割り振りに無理がないか見直したい」「清掃の委託を検討しているので、手順や体制の考え方を相談したい」といったご相談があれば、どうぞお気軽にライフスタッフへお問い合わせください。

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